プログラム紹介画像

レポート

第15回うえだ城下町映画祭のゲストトークと自主制作映画コンテストの表彰式の様子を報告します。

「おとうと」ゲストトーク 山田洋次監督

山田洋次監督トークショー 「映画監督の山田です。みなさんこんばんは。 こういう映画祭を上田のような街で15年続けてきてくださったということは、日本の映画人にとってどんなに勇気を与えられるかわかりません。」というご挨拶をいただき、始まった山田洋次監督のトークショー。
山田監督は上田では「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」「たそがれ清兵衛」を撮影しています。


上田で撮影した理由や撮影の思い出については、若い頃に撮影所で「ロケ地にこまったら北信(信州の北部方面)に行くと良い、日本人の故郷というべき美しい景色がある。映画人にとって信州は重要なロケ地」と言われていたことや、上田には周辺の農村や里山、古いお寺などの魅力があるとのこと。
「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」で前山寺で撮影した時、石段の上で寅さんが腰かけてパンを食べている演技を見て、この人は何をしていても絵になる、俳優がその風景の一部分になるということが究極の演技であると思った。
「たそがれ清兵衛」では侍が決闘するということは仇討とは違ってこっそりすることなので、人目から隠れた丸山邸の裏の川がふさわしいと思ったそうです。

また、山田監督は最近「母べえ」や「おとうと」など現代を舞台にした映画を作っていますが、現在の映画作りに関する想いをお聞きしました。
「おとうと」のテーマは、家族が仲良く暮らしていくのは理想だが、実際はこの国ではそういかないということ。バラバラになりそうな不安、離れていく不安、哀しみとか皆さんの身近にもそういう問題があるのでは?
「映画を作る」という仕事は観客が求めている、期待するものに応えるという事なのではないか。それは同時に自分も観たい映画でもある、とのこと。

最後に次回作についてお話を伺いました。
小津安二郎の作品「東京物語」の設定を現代に持ってきた映画を撮影する予定だった。
五十数年前の映画だが、家族がいずれバラバラになるという不安を思わせる内容であり、親というのはいつか子供に裏切られていくのだという、現代にも通じる物語。
3月の末にクランクインする予定で準備を終えていたが、3月11日の震災を迎えてしまった。
仕事が手につかない、原発もメルトダウンという不安の中で作る訳にいかないという気持ち、また、3月11日以前と以降の東京は大きく違うと思い、いったんクランクインを延期した。
来年の2月の末から改めてクランクインする。部分的に脚本を直すところもあり、まさしく2012年の東京の物語になる。
あと3ヶ月後には始まり、来年の夏までには完成させたいとおっしゃっていました。

この後、観客からの質問に答えていただき、映画界に入ったいきさつや、いろいろな土地に行って撮影することへの想いを語っていただきました。

「イヤータグ」舞台挨拶 山岸謙太郎監督

山岸謙太郎監督舞台挨拶"  うえだ城下町映画祭第五回自主制作映画コンテストで「キヲクドロボウ」を受賞した山岸謙太郎監督。今回は新作「イヤータグ」の公開にあわせ、舞台挨拶にお迎えしました。

Q.幼い時から映画には親しんでいたんですか?
 暗い部屋に閉じ込められるのがきらいで映画館にはあまり行ってなかった 。実家が須坂市で家具屋を営んでおり、商店街の中に「須坂映劇」という映画館があった。そのため無料券を毎月2枚もらえた。映画館にはおじさんがアメをくれたのと、エアコンが効いていたのでそれを目的で行っていた(笑)。
 成人して、ゲームのプログラムの専門学校を卒業し、ゲーム学校の先生やパソコンの先生などをやっていた。 10年前にインターネットで一緒に映画を作りませんかという誘いがあって、映画には興味がなかったが、インターネットで映画を作るというのが面白そうだと思った。当時はパソコンで映像を編集しよう、という動きが出始めた頃だった。

Q.インターネットで映画を流す、という仕事を初めてから映画が面白くなりましたか?
 さきほどの、誘われて作った映画が自分で面白くなかった。何がいけないのか、いい映画をあまり観ていなかったので見本となるものが頭の中になかった。悔しかったのでもう一本撮ろうと思った。
 それまで名作といわれるものは観ていなかったので、黒澤明を全作品最初から順にレンタルビデオで観たり、 小津安二郎、ヒッチコック・・・友達が勧めたものも観たりしていった。
 映画の撮影アングルや場面転換については、先輩たち(先達の映画監督たち)に教えてもらった。映画を勉強する学校を出ていなかったので映画館やDVDで勉強するしかなかった

Q.そのような中、第五回自主制作映画コンテストで「キヲクドロボウ」で大賞を取ったんですよね。あちこちから 映画製作の声はかかるようになったんですか?
 いっぱい来るかと思ったが始めはそうでもなかった。そのうちyahooムービーやVシネマから声が掛るようになった。

Q.今回のイヤータグは上田でもロケをしていますが、上田を選んだ理由は?
 上田のロケは電車の中のシーン(上田電鉄別所線)です。電車内の撮影は都内ではさせてもらえないし、地方では満足できるところがなかったり断られたりした。そういえば、と上田を思い出した。映画祭の実行委員に連絡し、信州上田フィルムコミッションを通して上田電鉄を紹介してもらった。
 最初は撮影箇所はシルバーシート付近だけでいいです、と言ったが、フィルムコミッションの人が「もっとこういうふうに撮りたいんでしょ?」と歩み寄ってくれて上田電鉄の方とも相談し、車両一個が貸切になった。
 実際に走っている電車のうち2両のひとつの車両をまるまる貸してもらった。
 また、上田の方にエキストラとして参加してもらった。電車急停車のシーンでは実際には急停車できないので、一斉に揃ってよろけてもらうという迫真の演技をしてもらった。ほぼ一発撮りでOKだった。エキストラ慣れしていると思った。

Q.「イヤータグ」の監督自身からの見どころは?
 「キヲクドロボウ」はコンプレックスがあった。いろいろなところで話題になったが、一部ではコンピューターグラフィックスだけがすごい、ただのエンターテインメントだよね、と言われて悔しかった。
 また、ハッピーエンドのすがすがしい映画なので、今度は逆をやってやろうと思った。
 「イヤータグ」はダークエンタテインメント。暗くて後味はよくないが、そういうものでも魅力的な映画があり、そういった作品を作りたかった。

Q.アウトローの雰囲気の刑事が出てきます。松田優作と思ったが世代的には違いますよね?
 リアルタイム、再放送では観ていないです。ただスタイリッシュな「キヲクドロボウ」に対してアナクロなものを表現したかった。

Q.作品中に携帯電話やインターネットに対する批判も見られましたが?
「キヲクドロボウ」でテクニカルな部分が評価されたので、その恨みかもしれない(笑)。

Q.「イヤータグ」の続編はあるのか?実は2時間くらいの映画の前編なのでは?
 元々2時間くらいの作品を想定していたが、予算や自分のスケジュールなどがあり、一回区切った方が、作品としては自分が何をするべきか把握した上で作れると思った。一応プロット的には最後までイメージはある。
 続編は復讐劇になると思うが、ただ、だれに復讐すればいいのか?対象になる人物はいるが、果たしてその人でいいのか?自分で答えが出たら作りたい。

Q.最後に観客へのメッセージをお願いします。
 今日は「イヤータグ」を観に来てくれてありがとうございます。 自分が生まれた長野県でもあるし「キヲクドロボウ」を最初に認めてくれた映画祭ということもあり、上田で初公開することにしました。
 スタッフが一生懸命作った大切な作品です。楽しんでくれれば光栄です。
 今日は来てくれてありがとうございます。

第九回自主制作映画コンテスト表彰式

第九回自主制作映画コンテスト表彰式  九回目を迎えた自主制作映画コンテストの表彰式は、大賞の山田慧伍監督、大林千茱萸賞の酒井健宏監督、永井正夫賞の落合賢監督のアシスタント安武あづみさん、古厩智之賞の鈴木祥監督をお迎えして行われました。
 表彰式では品田雄吉委員長から大賞、各審査員から審査員賞が授与され、審査員からのコメントと受賞監督から感想をお聞きしました。


受賞者  また、夕方には受賞者、審査員、「映画のまち上田」ゲスト、映画祭スタッフを交えて懇親会を行いました。
 なお、受賞作品は上田市マルチメディア情報センターの映像ライブラリーで12月中旬から無料で視聴できる予定です。また、一部の作品をインターネットで配信します。
受賞作品の内容など、詳細は自主制作映画コンテストのホームページをご覧ください。

>>次のレポートページへ