うえだ城下町映画祭第八回自主制作映画コンテスト 審査結果

平成22年6月15日(火)〜8月8日(日)に募集した、第八回自主制作映画コンテストには ドラマ・ドキュメンタリー・アニメーションの74作品の応募がありました。
審査員と実行委員による予備審査が行われ、この度、審査員による本審査が行われました。その結果、下記のとおり受賞作品がきまりました。

受賞作品

大賞

監督:西中 拓史 作品名:「APE」(63分)

審査員賞

大林千茱萸賞 監督:Yoshino 作品名:「雲と空」(50分)
永井正夫賞 監督:鈴木 研一郎 作品名:「街の音、なにがしの唄」(50分)
古厩智之賞 監督:武田 真悟 作品名:「チルドレン」(108分)

表彰式・受賞作品の上映

 平成22年12月19日(日)から、上田市マルチメディア情報センター映像ライブラリーで全受賞作品を無料で視聴できます。

受賞作品紹介

大賞

「APE」

監督:西中 拓史(63分)
「APE」
<あらすじ>
卒業論文を抱え、恋人との仲もぎくしゃくしていた大学生の黒戸は或る日、一年前に起きた殺人事件を知る。犯人が自分と同じバイクに乗る少年だったことから事件に興味をもち、卒業論文のテーマとして事件を調べ始める。
<応募作品についてのメッセージ>
生きること、殺すこと、愛すること。それらの問題に真正面から挑みました。たくさんの方にこの作品を観て頂けたら幸いです。
<監督自己アピール>
ひたすらに誠実に魂のこもった作品を作ります。
審査員賞(大林千茱萸賞)

「雲と空」

監督:Yoshino(50分)

「雲と空」

<あらすじ>
転校生と彼の存在を気にする在校生。全くタイプの異なる二人が見えない力によって世界が開かれるまでを描いています。
<応募作品についてのメッセージ>

陰と陽のようなタイプの違うものは実は表裏一体であり互いになくてはならないものである。また執着していたものを手放すまでのプロセスを伝えたいと思い制作しました。

<監督自己アピール>
社会人をしながら週末監督をしています。美しい日本の光景を映像に盛り込むことを心がけており、将来は世界に発信できるように日々精進しています。
審査員賞(永井正夫賞)

「街の音、なにがしの唄」

監督:鈴木 研一郎(60分)

「街の音、なにがしの唄」

<あらすじ>
時折、ギャグやユーモアを交えながら、「テキトー」に世の中を渡ることができない、不器用な男の成長を描く。
<応募作品についてのメッセージ>

当たり前の事ではないのに、さも当たり前であるかのように行われる、あの分野にどうしてもツッコミを入れたくなりました。

<監督自己アピール>
「ユーモア」、「わかりやすさ」、「エンターテイメント」を信条とし、映画をあまりご覧にならない一般の方でも楽しめる作品を作ることを目指しております。 http://suzukikenichiro.com
審査員賞(古厩智之賞)

「チルドレン」

監督:武田 真悟(108分)

「チルドレン」

<あらすじ>
児童養護施設で育った康介の元に突然父親が現れる。父と共に暮らしていく決意をした康介を、父は自身が信者として通っている教会へ連れていく。その教会で康介は同級生の女の子に出会う・・・。
<応募作品についてのメッセージ>
この作品の内容はとても個人的な思い入れがあるので、観て下さる方がどのような感想を抱かれるか正直分かりません。しかし、それぞれの見方で楽しんで頂けることを願っています。
<監督自己アピール>
見てくれた人に少しでも何かを残すような映画を作っていきたいです。

審査員コメント

大賞「APE」 監督:西中拓史

 一年前の高校生殺人事件を、その犯人が自分と同じ「バイクに乗る」少年であることから興味を持ち、卒業論文にまとめようとする。  殺人事件の状況を追う過程で、高校生の犯人と自分の内面を見つめる。 進路に、人との付き合いに、恋に悩む高校生の心の振幅と、就職活動、卒業論文、恋人との間で悩む自分の心の振幅がよく表現されている。  始めと終わりに流れる曲「ビリーブ」の合唱の完成度が高く、重い主題に光を与える役目を果たしていると思われる。 (永井正夫)


 ぐいぐいと先に引っ張る力が凄い。なぜ女の子を殺さなければならなくなるのか、どんどんと気になってハラハラ見てしまった。 問題はそれと同時に「どんな凄い結末が待ってるのだろう」と見てるこっちの期待値もどんどん上がっていってしまうことだろう。 殺人がごく普通のこと、という価値をもう一回ひっくり返してくれたなら・・・と無想しました。 (古厩智之)

大林千茱萸賞「雲と空」 監督:Yoshino

 まずは冒頭にぽんと映る、タイトルを感じさせる清々しい雲と空。しかしそこから一転、暗い部屋で掃除をする母と息子。子どもにしては、その丁寧な床の磨き方からすでにドラマの始まる予感がする。物語は在校生と転校生のお話ながら、他の生徒がひとりも校内に登場しない不思議さを内包しながら、説明過剰にせず、絵作りで静けさを積み重ねる感覚が純文学的で、更にはゆったりした時の孕み具合に、「奇妙な肌触り」を感じる作品でした。 風景の綴り方が美しい。遠景などをしっかり抑えることで画面がふくよかになる効果が出ていました。それだけに時折の音の乱れが残念です。整音にもう少し気配りされれば作品がより美しくなることでしょう。(大林千茱萸)

永井正夫賞「街の音、なにがしの唄」 監督:鈴木研一郎

 「テキトー」を信条とした弁理士資格受験者の日常と成長をミュージカルの形で表現している。 主人公はじめ、心を寄せるパニック障害の女性、人の良さそうなカップル、就活に懸命な後輩、 ちょっとしつこい新聞勧誘員など周りの人々もそれぞれしっかり描かれ、存在感が出ている。 唄やダンスに移る過程も無理を感じさせない。 さらに一人一人の歌唱力、タップダンス群のレベルが非常に高く楽しめる。質の良いエンターテインメントとして成立していると思う。 (永井正夫)

古厩智之賞「チルドレン」 監督:武田真悟

 感動した。男の子のシーンが特に「そうとしか出来ない」感じに溢れて る。 そして各シーンの「まるで本物」な感じ。宗教施設、母の家。ここからど こにも行けない予感に溢れ、それをすっかり丸々と実は一回肯定している ところが無類の強さを生んでいる。逃げ続ける話の後に来るものをまた見 たい。(古厩智之)