受賞作品
■自主制作映画部門
大賞
該当なし
審査員賞
大林千茱萸賞 監督:日原 進太郎 「パリレリーナの穴」
永井正夫賞 制作者:麻和 正志 「イルミネイター 〜魔法使いを探せ〜」
古厩智之賞 監督 :松上 元太 「酸欠の海」
■私のふるさと部門
最優秀賞 監督:草野 彰夫 「セレーノ八木沢の春」
作品の鑑賞について
受賞作品のDVDを上田市マルチメディア情報センター映像ライブラリーに収蔵しています。
視聴は無料です。
受賞作品紹介
自主制作映画部門
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大林千茱萸賞
「パリレリーナの穴」 監督:日原進太郎
<あらすじ> 祖父のアトリエで絵を描きつづけるヨウチョン。彼の夢は一人前の画家になること。しかし、何年経っても輝くことはない、くすんだ絵・・・。そんなある日、彼は小さな穴を見つける。
<作品についての監督のメッセージ> 夢とは、ときに閉塞的で、ときにどこまでも限りなく膨れ上がる。言葉にするには照れ臭く、でも人に伝えたい衝動がそこには在る。中国語という、どこか温かみにあるモノローグで、物語を包みました。
(上映時間19分)
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永井正夫賞
「イルミネイター〜魔法使いを探せ〜」 制作:麻和正志
<あらすじ> 魔法がきびしく禁止された世界。特殊警察の追ってから魔法使いを守る仕事を任された魔法の戦士、それがイルミネーターだ。ある日、学校に次々と起こる不思議な出来事。魔法使いのいたづらか、それとも復讐なのか?イルミネーターのサツキが事件解決にのりだした。特殊警察がくる前に邪悪な魔法を打ち破れるのか?
<作品についての制作者のメッセージ> 松本市立寿小学校2004年度6年生の一学級が全力で創ったファンタジー映画です。家族で何度観ても楽しめます。
(上映時間36分) |
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古厩智之賞
「酸欠の海」 監督:松上元太
<あらすじ> 工場で働く2人の若者、和也と隼人。風俗で働く女、サツキ。現代の若者のやるせなさをリアルに描いていく。
<作品についての監督のメッセージ> 現在”しか撮れないモノ!
(上映時間63分) |
私のふるさと部門
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最優秀賞
「セレーノ八木沢の春」 監督:草野彰夫
<あらすじ> 上田市で158番目の自治会、セレーノ八木沢は平成10年以来、7年目の春。40数戸の小さな自治体としての平成17年春をまとめました。
<作品についての監督のメッセージ> この作品映像に合わせて、セレーノ在住の作曲家、手塚均氏が挿入曲として提供してくれたものです。
(上映時間15分) |
審査員コメント
■自主制作映画部門
【総評】 審査員 大林千茱萸
不思議に思うことがある。
第三回目にして思うことだけれど、毎年、応募のためのテーマは決めていません。
それなのに、全国津々浦々から集まって来る応募作品には毎年、同じテーマの作品が多い。
第一回目は、「誰かを癒す自分」という役割を演じる主人公が多かった。
第二回目は、「この世にはいない死者が生者を癒す」という物語が多かった。
そして第三回目は、「人に迷惑をかけても自分が癒されれば自分は成長できる」という、
自作自演か、自分を主人公に投影した、なんとも自我の強い作品が多かった。
この第一回目から第三回目への動きをどう意味付けし、捉えて行くかは来年への課題だが、
ビデオなど機材が身近になり、自主製作作品は今、ふたつの方向に大きく流れている。
それは「自分に寄り添ったパーソナル」な作品か、
「他者を意識したエンターテインメント(娯楽という意味だけではなく)」な作品か。
どちらにしても、「コレを描きたい」という想いの強い作品が、結果的には心に焼き付く。
そして今年も、私の心にしっかりと焼け焦げを創ってくれた作品との出逢いがありました。
応募して下さった作家さんたちに、まずはありがとう、を、伝えたいです。
撮り続けることは相当の覚悟や“業”が必要ですが、来年もお待ちしております!
【『パリレリーナの穴』/大林千茱萸賞】
審査員 大林千茱萸
日原進太郎監督の『パリレリーナの穴』は、とても魅力的な“間”を持っている。
その揺るぎない独特の語り口は淀みなく、独創的でブレがない。
言葉、音楽、小説、舞台だけでは表現しきれない、
見せるべき画の積み重ねが映画的な空間を創り出している。
それは主人公が座るベンチの後ろを走る少年だったり、
決して全体像を拝むことのできない穴の中の少女だったり、
「穴ローグ」「ポコティン」といった華麗なる言葉遊びの部分だったり…。
偶然に見せかけた、必然的な仕掛けが随所に散りばめられていて、引き込まれる。
そして中国語で映画全体を包むという、監督が選び取った装置が効いている。
これは夢見ることに臆病な人へ捧げる、とても素敵な妄想小咄ファンタジーだ。
次の作品を早く観たいと思わせる、先が待ち遠しい映画監督になることでしょう。
【『イルミネイター〜魔法使いを探せ〜』/永井正夫賞】
審査員 永井正夫
先生が教育現場にカメラを持ち込んで、子供達と一緒に映像作りをしていることは作品の優劣とは別に
その製作過程は大変な 評価に値することです。先生とクラス全員の生徒さんで喧々諤々やりながら作品作りをしている姿を想像すると彷佛するものがあります。
製作の意欲・努力を買いたいと思います。映像を「観る」だけでなく、「作る」ということは子供達に刺激と なると共に小学校の大事な思い出となるでしょう。
このような先生がもっと出てきて欲しいと思います。
【『酸欠の海』/古厩智之賞】
審査員 古厩智之
ありきたりな展開ではある。でもしかし「よくあるお話こそ一番エラい」と言いたい。語られるのは、風俗嬢や友達との「出会いと別れ」。
何の行動もできない主人公の弱さ、受身にならざるを得ない時期の苦しさ、遊んでいる時代の痛み・・などなど青春期の苦しさ、ひ弱さは共感と共に語られる。(抑制されたフレームに満ちている監督の共感)
そして、そこを卒業していく「若干の喜び」の描写が素晴らしい。プラットフォームにたたずむ女の子。地平まで続く雲、キャメラの前を惜別するように自転車で1回周り、遠く旅立って行く友人。「今度一緒にラーメン食わない?」と初めて他人にアプローチする主人公。
画面に漲っているのは「出立の空気」で、青春とは「出立」そのものなのだな、と再確認した。
とても好きな作品である。
そうだ。注文を一つ。次作ではこの抑制されたフレームが揺らいでしまうようなテーマを期待します。
■ 私のふるさと部門
審査員 吉村晴夫
今年の「私のふるさと部門」は、3作品しか応募が無く、大変さびしく残念でした。それでも各作品とも地元への熱い思いが伝わってきます。
その中でも、草野彰夫さんの「セレーノ八木沢の春」は、とくに目新しい内容ではありませんが、地元の作曲家手塚さんが作曲した心地よい音楽が映像にマッチして、安心して見ていられる作品に仕上がっていました。
山崎建治さんの「太郎山音頭 40年ぶりに復活」は、おもしろいテーマでした。音頭の歌詞にあわせて太郎山の魅力を表現していれば、もっと伝えたいことがはっきりしたのではないか、と思います。材料がよいのに、料理の仕方がちょっとちがうようで、残念です。
竹内正幸さんの「「我ふるさと踏入自治会〜みこしを通じて心のふれあいを〜」は、子供たちのみこしをかつぐ稽古風景をメインにして、祇園祭の本番を迎える、という構成にすればテーマが強調できたのではないかと思います。インタビューが多すぎるのが気になりました。
3作品を検討した結果、草野さんの作品が一番テーマが伝わってくる、ということで「セレーノ八木沢の春」を最優秀賞といたしました。
次回からは多くの方々からの多数の応募をお待ちしております。
審査員 清水卓爾
昨年と同様、テーマに沿って作品を作っていくという基礎的な面で”ぶれ”が見られたのは残念でした。そんな中で草野彰夫さんの「セレーノ八木沢の春」は丘陵地帯に造られた新興住宅地の春を、様々な行事等を折り込みながら映像化した、そこに住む人ならではの暖かさと、軸がしっかりしていたことが評価された。
■第三回自主制作映画コンテスト要項
■第三回自主制作映画コンテスト受賞作品紹介
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