うえだ城下町映画祭第14回自主制作映画コンテスト 結果

2016年6月16日(木)〜8月8日(月) に募集した第14回自主制作映画コンテストには 71作品の応募がありました。 審査員と実行委員による審査が行われ、下記のとおり受賞作品が決まりました。

大賞

監督:松本 恵  作品名:「エリーゼを解く」(28分)

審査員賞

大林千茱萸賞 監督:高橋 良多  作品名:「桜桃らんでぶー」(40分)
柘植靖司賞 監督:塚田 万理奈  作品名:「空(カラ)の味」」(135分)
古厩智之賞 監督:キム・テヒョン  作品名:「つなぎ」(28分)

実行委員会特別賞

監督:たか ひろや  作品名:「より道」(33分)

受賞作品配信・収蔵

2016年12月11日(日)〜2017年3月31日(金)まで受賞作品「つなぎ」と「より道」の配信を行います。


また、下記の作品を上田市マルチメディア情報センター映像ライブラリーに収蔵しました。端末で無料で視聴できます。
  • 大賞「エリーゼを解く」 監督:松本恵
  • 審査員賞(大林千茱萸賞)「桜桃らんでぶー」 監督:高橋良多
  • 審査員賞(古厩智之賞)「つなぎ」 監督:キム・テヒョン
  • 映画祭実行委員会特別賞「より道」 監督:たか ひろや

表彰式・受賞作品上映

下記のとおり表彰式ならびに受賞作品上映を行いました。
上映会ちらしはこちら

<表彰式・大賞作品上映>
11月18日(金)  上田映劇 (長野県上田市中央1-12-30)

<受賞作品上映>
11月19日(土) 上田文化会館3階視聴覚室 (長野県上田市材木町1−2−3)
<全受賞作品上映>
11月26日(土)、27日(日) 上田市マルチメディア情報センター (長野県上田市下之郷812−1)

<ノミネート作品上映>

11月19日(土)、20日(日) 上田文化会館3階視聴覚室 (長野県上田市材木町1−2−3)
作品についてはノミネート作品上映をご覧ください。

受賞作品紹介

「エリーゼを解く」 大賞

エリーゼを解く
監督:松本恵
2016年 28分
<あらすじ>
市場の青果店で働く傍ら、シークレットテレフォンという人の悩みを聞くリスニングスタッフをしている絵里。しかし、愛想のない口調のせいで、いつもすぐに電話をきられてしまう。ある日、同じ市場で働く善助が客として電話をしてくる。その日、初めて電話を切られなかった絵里は、善助を気になりはじめるが、過去のトラウマで素直になれない。
<作品のメッセージ>
恋に臆病になってしまった主人公の心の葛藤を描く。
<監督自己アピール>
まだ2作目ですが、ラブストーリーに特化した作品をつくっていきたいです。

「桜桃らんでぶー」 審査員賞(大林千茱萸賞)

桜桃らんでぶー
監督:高橋良多
2016年 40分
<あらすじ>
彼氏に振られて桜アレルギーになった女子大生が、「桜桃」をきっかけにある男と出会いストーカーされ、幸せを掴む話し。
<作品のメッセージ>
後悔と罪悪感を抱えながらも、何かを決断し選択していくことが、幸せを掴むことなんだ、ということを描きたい。ドイツの詩人ハインリヒ・ハイネはこう言っている。「少しの悲しみもない純粋な幸福なんてめったにあるものではない」。
<監督自己アピール>
早稲田大学川口芸術学校卒。同校の卒業制作で監督した怪奇特撮映画『STELLA』が2014年うえだ城下町映画祭自主制作映画コンテスト審査員賞受賞。恋愛と格差の映画『さよならパークハイツ』が2015年武蔵野映画祭グランプリ受賞。2016年監督作『やまとのもり』がShort Shorts Film Festival&AsiaミュージックShort部門にノミネート。

「空(カラ)の味」 審査員賞(柘植靖司賞)

空(カラ)の味
監督:塚田万理奈
2016年 135分
<あらすじ>
特に何の不自由もなく暮らしていた女子高生、聡子。彼女はいつしか自分が摂食障害に陥っている事に気が付く。ギリギリの先で聡子は、危うげな女性、マキと出会う。
<作品のメッセージ>
誰にも言えなかった私の話を撮りました。
私が出会った大切な人を形にしたいと思った為です。撮影を通して、素敵な仲間達と出会いました。とにかく大切な作品になりました。
<監督自己アピール>
卒業制作で制作した作品「還るばしょ」でうえだ城下町映画祭第12回自主制作映画コンテスト審査員賞を受賞させて頂きました。

「つなぎ」 審査員賞(古厩智之賞)

つなぎ
再生はこちらから(WMV形式)
監督:キム・テヒョン
2015年 28分
<あらすじ>
1年前、朋子は旦那を通り魔に襲われ、失った。あの衝撃で1年間家に閉じこもったまま毎日ぼんやりとした日々を過ごしているなか、突然、夢を通して、パラレルワールドを経験することになる。朋子の強い「想い」が朋子を家の中から外へ向かせている。
<作品のメッセージ>
「つなぎ」というタイトルからパラレルワールドという世界観を重視しているように感じられるが、実は「何故朋子が夢を見る事によってパラレルワールドへ行けたのか?」がこの映画の重要なポイントである。現実を受け入れられずに閉じこもっていた朋子の、次元を超えた「想い」がテーマの一つになっている。
<監督自己アピール>
2013年に多摩美術大学美術部情報デザイン学科メディア芸術コース卒業。現在は東京に在住し、映像ディレクターとして活動。また個人制作も積極的に取り組み、様々な映像コンペに参加している。

「より道」 映画祭実行委員会特別賞

より道
再生はこちらから(WMV形式)
監督:たか ひろや
2016年 33分
<あらすじ>
「この町嫌い」「どこが?」中三の夏。メイはその答えを探してみるコトにした。
<作品のメッセージ>
子供達の芝居が多くの人の目に触れる機会を作りたく、制作しました。
<監督自己アピール>
温もりを意識した作品を作るようにしています。

審査員コメント

第14回自主制作映画ンテスト総評

柘植靖司
 毎年思いを強くするのですが、応募作品のアングルや構図の組み立てといった撮影技術、また編集技術の高さに感心させられます。たぶん、スマートフォンをはじめ様々な機器に動画撮影機能がついていて、日常的に動画撮影・編集をすることに慣れている。慣れている、というか当たり前の行為になっていて、動画を撮ることにも撮られることにも身構えることがない。この行為の中で自然と、無意識のうちに技術が高くなっていく。そんな感じを受けます。また、出演者においても(特にずぶの素人だろうと思われる演技者において)変化があります。明らかに上手いのです。一昔前に比べると、目を覆いたくなるような演技者は本当に少なくなったと感じさせられます。まあ、素人には素人の味というものもあるのですが…。
 しかし一方で、今回強く感じたのは撮影技術の上手さとともに、ドキッとさせられる映像が少なくなったのでは…。とんでもないアングルや構図に出会わなくなった。アイ・ポジション(撮影者または出演者の目線の位置)から大きく外れていない。逆にいえば、人の視点から外れた、とんでもない位置からの視点が少ない。カメラの視点が人の視点からあまり外れていないという傾向は、描こうとする対象に対する作家の視点も対象に近いところにいつも存在しているのだろうか?そんな印象を受けました。
 50メートル位の長さの「自撮棒」で自分を撮ってみたら面白いのでは?と感じました。そのうち、ドローンで撮影した作品がドンドン応募されてくるのでしょうが…。

大賞「エリーゼを解く」について

柘植靖司
 主人公が働いている少し寂れた地方市場の佇まいや行き交う人々がとても自然に描かれている。きわめて狭い範囲で物語が展開するのだが、それゆえに恋に対して臆病で、うじうじとして素直になれない主人公を温かく見守られた気がする。…子猫が庭先の外の世界に興味津々ながらも、用心深く怯えながら縁側を行ったり来たりしている――そんな印象を覚えた。彼女の前に純朴な青年が現れる。彼もまた何がしかの恐怖感を持ち、恋に対して必死だ。市場を行き交う人々はそんな二人のことは全く知らない(…当たり前だが)。そんな市井で展開する小さな恋の誕生が温かく微笑ましい。恋は二人でするものだが、恋が生まれる場所、二人を取り巻く人々の肌触りが恋に大きく貢献するのでは、そんな気がしました。

古厩智之
 映画を撮るのが楽しい!オモチャを貰って楽しむ子供のような監督の手つきが楽しい。ガジェット感に満ちている。 ただ、オモチャ箱のような、箱庭の中にいる登場人物たちがまたいい。人形の役割りをスルリと越え、体温がある人間的魅力を放つ。
主人公の女の子、無愛想で不器用な表情筋の愛おしさ。
ヒーローの元ボクサーが長い手足を不器用に振り回しながらヒロインに近づく風合い。
隣の嫌味なライバルの女の子ですら、精一杯高慢に鼻っ柱をあげ。
人間を愛してみよう、という、とても大声では言えないけど全うな気概に満ちた、傑作です。
感動しました。

審査員賞(大林千茱萸賞)「桜桃らんでぶー」について

大林千茱萸
 うえだ城下町映画祭自主制作映画コンテストの毎年の楽しみは、新しい作家さんと出会えること。その中でもことに楽しみにしているのは、新作が出来る度にうえだ城下町映画祭を思い出して応募して下さる作家さんの作品を観ること。大林千茱萸賞の特徴のひとつは、「これ1本限りではなく、これからも撮り続けてくれるであろう予感のする作家」さんの発見と応援。これまででいえば、第二回目に応募してくれたイリエユウ監督をはじめ、ヒハラシンタロウ監督、カネコマサカズ監督。映画を撮り続けることが難しい時代が続いている中で新作を撮り続けている。 『桜桃ランデブー』のタカハシリョウタ監督は、ある日突然『STELLA』という怪奇と幻想の特撮映画と共に私の前に降臨。摩訶不思議で独特なリズムな演出が、観る者の身体に奇妙な映画の種を蒔き、その感覚は二年経ってもまだ残像感がある。次作『さよならパークハイツ』も普通の映画の風体をとりながらも、オリジナルな奇妙感はより醸造されていた。そして今回の『桜桃ランデブー』。例によって登場人物たちはどいつもこいつも変という安定感。不格好なランデブーを重ねるうちに、つるっとしたのっぺらぼうで無難な人生より、ざらりとした痛みや悲しみの中に幸福感が漂う。それはとても愛しい幸福感に感じる。誰とも似ていない世界観があることは、作家としてものすごい資質だと思います。今回3本目を観て、新作が作られる限りずっと見続けたいという決意を新たにしましたので、うっとうしいかも知れませんが、お覚悟のほどを。この度は自作の映画祭上映のため直接お祝いできずごめんなさい。心よりおめでとうございます。フィラデルフィアから、大林千茱萸拝

審査員賞(柘植靖司賞)「空(カラ)の味」について

柘植靖司
 主人公はなぜ摂食障害症になったのか?この病気の原因と治療は難しいと聞きます。 作者自身がこの病気を体験し、それを描いたと応募書類に書かれています。作者が第12回の本映画祭で『古厩賞』を受賞された『還るばしょ』でも摂食障害症が描かれています。(映画に関わらず)――何人も、人は必ず優れた作品を生み出すことが出来る。それは自分自身を深く見つめ、曝け出すことだ――と言います。
しかし、これがなかなか難しい。表現の方法や技術力もありますが、何よりも自分自身のことだけに客観的な視点に立つことが難しい。往々にして独り善がりな作品となり、他者に伝える作品として成立していないことが多いと思います。
本作品が成功しているのは(前作も同様だと思いますが)、他者に対する自身の視点をしっかり見据えて描かれていることだと思います。
135分という長尺の作品ですが、主人公の病気の原因は一体何なのか?主人公は、主人公の周りの人たちはどうなっていくのか?ある種のミステリーとして、サスペンスとして見せられました。演出、技術、編集、どれも高い完成度があると思いました。何よりも、キャスティングが作品に大きく貢献していると感心しました。 自身の体験を基にしているだけに、どうしてもこれ以上切り詰められなかったという痕跡は十分に感じましたが、しかし、やはり少し長いと感じました。 私の審査基準である「監督として組んでみたい作品」というよりは、「ぜひとも次回作も見てみたい作品」として本作品を柘植賞に選出させて頂きました。

審査員賞(古厩智之賞)「つなぎ」について

古厩智之
 主役の女性の「顔」が美しい。目の前で起きる事態に理性も心も追いつけず、ただ目を見開いて見つめる。その顔が実に良かった。
もともと映画というのは「何かを見つめる」ことと相性がよい。何かを見つめてるとき、わからない事態を前にしたとき、人間はただの受動態となり、目の前の光をただ受け止めるだけの存在になる。その無力な木偶人形のような姿こそ、人間本来の姿かもしれない。
慎ましく、映画的な立ち姿でした。

映画祭実行委員会特別賞「より道」について

山崎憲一(うえだ城下町映画祭実行委員長代理)
 素直に面白かった。例えば、ファーストシーンでは、カナブンが画面いっぱいのアップから空高く飛び上がり、米粒の様に小さくなり遠くの家並みに消えていく、カメラがパンダウンするとバスを待つ女子中学生がふたり、するとカナブンが飛び去った遠くの家並みから、やはり米粒の様に小さな人影が近づいてくる、自転車通学の女子中学生(主人公)の登場だ。 この後、再びカナブンの絡みがあったりするのだが、メインの女子中学生三人を一挙に、その性格・関係まで紹介してしまうこのシーン。そのタイミングと手際の良さが際立った。 更にこのシーンはストーリー全体を予告するかの様な構成になっているのも巧みだ。 このファーストシーンを始め、みんなで迎える夜明けのシーンなど、納得いくカットを撮るためのチャレンジと努力は賞賛されるに相応しい作品です。
 内容については、個人的な感想になるのですが、特に今回、応募作品の中に社会へのメッセージが無かったことが気になりました。作家であろうとする皆さんが、社会などと言うダサイことに関わるのを避ける気持は良く解るのですが、映画(映像)とは人類が社会性を重んじるに対応して、必然的に生まれてきたメディアでもあると考える私にとっては、とても寂しい出来事です。 (チァップリンが、ピカソが、ボブディランがそうであるように、社会的メッセージは決して ダサクありません。むしろ、それを言えない状況、それを感じない自分こそがダサイのでは?) しかし、皆無ではありませんでした。この作品「より道」にはメッセージがあります「ふるさと」 に対してのメッセージです。
作者本人・実行委員会のメンバーからは深読みと批判されるかもしれませんがふるさと≠ テーマに選んだことは、作者の感性・センスを表すものであり、また、その表現力の巧みさに 頼もしい未来を予感させる作品です。