うえだ城下町映画祭第17回自主制作映画コンテスト

結果発表 2019年11月8日(金)

この度は、うえだ城下町映画祭第17回自主制作映画コンテストにご応募くださりありがとうございました。 全国から112作品の応募があり、 審査員3名(大林千茱萸さま、柘植靖司さま、古厩智之さま)による審査の結果、下記とおり大賞と審査員賞が決まりました。また、実行委員会で審査を行った実行委員会特別賞も1作品決定しました。

「ISI]と「ペールブルーがかさなる」はYouTubeで配信しました。「春」「ISI]「ペールブルーがかさなる」「されど青春の端くれ」は上田市マルチメディア情報センター映像ライブラリーに収蔵しました。

作品名 監督 作品の
時間
大賞 大森 歩 31分
審査員賞
(大林千茱萸賞)
ISI 藤本 明 15分
審査員賞
(柘植靖司賞)
ペールブルーがかさなる
田中 麻子 30分
審査員賞
(古厩智之賞)
されど青春の端くれ 森田 和樹 68分
実行委員会特別賞 おろかもの 芳賀 俊・鈴木 祥 96分

審査員コメント

大賞「春」

短編映画として素晴らしく、よく設計された映画だと思いました。
俳優の存在感が作品に大きな貢献をしていて、映像に緊張感があり、ドキドキしながら画面に見入りました。
作家個人の体験を基にされたと聞きましたが、その体験(祖父との同居生活のみならず)が見るものに鋭く、痛々しく迫ってきます。
一方で、計算され過ぎた映像ゆえにある種の既視感を持ってしまったのも正直な感想です。
いずれにしても、応募作品中、頭ひとつ秀でた完成度の作品でした。
(審査員:柘植靖司)

大林千茱萸賞「ISI」

『ISI』 今回の応募作の中でいちばん驚いた映画です。
監督は20歳で、その20歳の躍動感、
荒ぶる魂感、疾走感すべてがない交ぜと成り、
世間にちっとも飼い慣らされていないゴツゴツ感。
そしてなによりも内面から溢れるようにほとばしる、
「決意」のようなものが映像からにじみ出ていました。

映画――というにはあまりにも荒削りですが、
「映画はかくあるべき」という文法や縛りを超えて、
作家がとても強い意志を持っていることが伝わって来る。
きちんと作家の意向に沿って空間を構成していて、
空間全体を使って登場人物や場面を変化させ、
異物同士が融合したり離れたりしながら、
インスタレーションの形相でたたみかけ、
揺れ動く自己に反映させていく。

15分という短い間に、
少女が目覚めてから脱皮していくようにも感じられたし、
繰り返される音楽の中で、不思議に浮遊感のある、
誰の視点かわからないまま連続するカメラワークは、
さまざまなテクスチャーを感じさせてくれました。

最後に一つ言うとすれば、
確実に「未来の映画」に近付いてるんだろうなと。
本人が意識しているかはわからないけれど、
新しい映画の形をたぐり寄せようと、
実験しているように思えました。

本作はいちばん意味がわからいままに、
いちばん夢中にさせてくれた作品です。
しかし本来映画とは、
知らない世界へ連れて行ってくれるもの。
自分では想像もできないことを体験できるもの。
そういうものだったんじゃないかと。
だからこれは未来の映画だけれども、
映画の原体験でもあるなと。

監督がこれからの世界をどう見つめるのか、
その観察力と、想像力、
未来に賭けるという想いを込めて、
僭越ながら大林千茱萸賞とさせて戴きました。
次回作を愉しみにしております。
(審査員:大林千茱萸)

柘植靖司賞「ペールブルーがかさなる」

ある意味で細やかな、何気ないテーマ(…実は大事なこのなのですが)と真っすぐに向き合い、大切に撮っている作家の姿勢が胸に迫ってきました。
何かと話を複雑にしたり、登場人物をこじらせてしまいがちな設定なのですが、とてもシンプルで素直に描いているのが、この作品の最大の勝利です。
前半、主役を演じる女優さんの美しさに違和感と話の展開に危なっかしさを 感じていましたが、それゆえに(後半は裏切られたように…)主人公の最後のセリフに納得させられてしまいした。…やられた!って感じでした(笑い)。
(審査員:柘植靖司)

古厩智之賞「されど青春の端くれ」

まったくイケてない田舎の童貞高校生三人組。自分もまったくそんな青春時代を過ごしていたのだけれど、すっかり忘れて(隠しおおせて)いけしゃあしゃあと都会で暮らしているのですが。この映画を見たら、一気にあの頃の空気を思い出させられてしまった。
公園で無目的にただフザけあう。仲間うちでしか通じないギャグを言い合う。ヒロインは次元が違う遠くにただいて。ヤンキーのパンチだけが飛んでくる。一日何回ものオナニー…。
「わーやだ。つらい」「何もなさすぎて苦しいとも言えない」「だけど生きてる喜びがある」
あらゆる相反する感情がむせかえるようにスクリーンを満たす。傑作でした。大好きです。
(審査員:古厩智之)

実行委員会特別賞「おろかもの」

まずキャスティング、そして、その役者を活かす演出・演技が特にすばらしい作品だ。
当然、それを支えているのは、良く練られたシナリオがあるわけで、映画は男女のキビを描きながら、徐々に物語の奥へと我々を引き込んでいく。しかも、観る者が想定するほとんどのことを少しずつ、少しずつ裏切りながら・・したがって物語の終わりにはいつの間にか、登場人物のほぼ全員が「違う人?」になっていることに気づかされる。それも、A子は徐々に、Bはあるシーンから突然に、Cは無規則に、それぞれが違うタイミングで変化していくのですが・・その中に、ほとんど変わらない人物もいたりするところが「うまいなー」と思わせる作品だ。
タイトルの「おろかもの」はかなりきつい言葉ですが、よく考えてみればヒトは皆愚かな存在であって、そもそも「おろかさ」がなければ物語りを始めることさえできません。愚かさは人間(特に男)であることの証、人間として生を受けた宿命です。(某国内閣府の「愚かさ」は別、あれは「悪・甘え」と言うべきだろう)
この作品は、そんなヒトの営みのなかに愚かであるが故に愛おしい「ヒトの魅力」を見事に描いている。
(うえだ城下町映画祭実行委員長 山﨑憲一)


ノミネート作品(受付順)
作品名 監督名
夏の夜の花 高橋 伸彰
ミは未来のミ 磯部 鉄平
pour 鈴木 貴士
ホーミング 中村 圭吾
VR職場 高島 優毅
こんがり 月足 直人
ひとりずもう 星崎 久美子
宮田バスターズ(株) 坂田 敦哉
とりもどす 藤野 知明
あらくれ 鈴木 冴
次は何に生まれましょうか 野本 梢
わたしのヒーロー 佐藤 陽子
テラリウムロッカー 葛 里華
ドブ川番外地 渡邉 安悟

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