うえだ城下町映画祭第五回自主制作映画コンテスト 審査結果・作品紹介

■受賞作品の鑑賞について

全ての受賞作品を上田市マルチメディア情報センターの映像ライブラリー(メディアランドUEDA映像ライブラリー)で視聴できます。

■コンテストの概要・結果

募集期間:平成19年7月15日〜8月31日
応募作品数:自主制作映画部門 62作品  私のふるさと部門 13作品

この度、審査が行われ、下記のとおり賞が決まりました。
■自主制作映画部門
大賞
監督:山岸謙太郎・石田肇 「キヲクドロボウ」(93分)

審査員賞
大林千茱萸賞 監督:金子雅和 「すみれ人形」(63分)
永井正夫賞 監督:横山善太「See you」(24分)
古厩智之賞 監督 :瀬川浩志 「蛾意虫」(51分)

■私のふるさと部門
最優秀賞 監督:中沢裕 「今に伝わる『戌の満水』の思い」 (13分)

■受賞作品紹介

自主制作映画部門
キヲクドロボウ

大賞
「キヲクドロボウ」 監督:山岸謙太郎・石田肇

<あらすじ>
  近未来の世界、脳医療企業「レムコーポレーション」は人間の記憶をデータ化して保存する技術を発表する。そんな中、主人公タロウは、謎の死を遂げた記憶保在技術の生みの親、リーサ・グレツキー博士の記憶データを盗み出そうとスラッシュと手を組み、大企業ビルに挑む。(93分)

<応募作品のメッセージ>
インターネットが普及し、情報収集が容易になった今日、我々は、その情報の表面をサッと処理して通り過ぎてはないだろうか。もしこの先人間の記憶がデータ化できたとしたら同じように我々は処理してしまうのだろうか。

※作品の詳細情報は下記のホームページでご覧になれます。
「キヲクドロボウ」のホームページ
http://kiwoku.jp/
監督の山岸謙太郎さん(やまけん組)のホームページ
http://projectyamaken.com/

すみれ人形

大林千茱萸賞
「すみれ人形」 監督:金子雅和

<あらすじ>
  兄・丈月、妹・すみれ、幼馴染みの螢介は猟奇事件に巻き込まれ、訣別する。五年後、寂れた見世物小屋の舞台に立つ丈月。彼が演じるのは、もの哀しくも滑稽な腹話術人形劇。(63分)

<応募作品のメッセージ>
"人間が人形になる"映画を作りたいという思いから発したこの作品は、世界観の構築のために、ロケ地・美術・映像美に徹底的にこだわって制作した。
 

See you

永井正夫賞
「See you」 監督:横山善太

<あらすじ>
吉巳(よしみ・25歳)は自殺をしようとした直前に、元彼女の菜花(さいか)の幻影を見る。最後にもう1度会いたいと、吉巳は久しぶりに家から出る。(24分)

<応募作品のメッセージ>
35mmのスチール写真のみで劇映画を作る試み。
大切な人を失ってしまった男の悲しみを描いた。

我意虫

古厩智之賞
「蛾意虫」 監督:瀬川浩志

<あらすじ>
  映画監督志望の大学生、藤見創太は同じ大学に通う平山あおばに密かに想いを寄せていた。顔見知り程度だった2人の関係は、あおばの突然の誘いによって破られ2人は急接近する。ちょうどその頃、道で不思議な玉を拾った創太は以後、不気味な女の影に悩まされる。(51分)

<応募作品のメッセージ>
ホラー映画のように撮ってはいますが、僕自身は青春映画、はたまた若い人々の恋愛を扱ったブラックコメディのつもりで作りました。人と触れ合うには勇気がいる。だからこそ真剣に取り組む価値があるものだと思います。


私のふるさと部門
戌の満水

最優秀賞
「今に伝わる『戌の満水』の思い」 監督:中沢裕

<あらすじ>
  江戸時代寛保2年(1742年)大洪水が起き、千曲川流域では多くの人が亡くなった。佐久穂町と小諸市の当時を振り返り、今に伝わる供養やお墓参り等の思いを巡る。(13分)

<応募作品のメッセージ>
佐久地方は古くから8月1日にお墓参りをする習慣がある。このいわれが「戌の満水」と関係がありそうなことから、映像で表現してみた。

審査員コメント

自主制作映画部門総評ならびに大賞「キヲクドロボウ」について

大林千茱萸審査員
今年は62本という応募総数の多さが証明していますが、映像は誰にでも簡単に撮れるようになったのだと痛感しました。ビデオ機材の価格が下がり、操作も簡単。照明がなくても夜でも充分に映る。まさに一家に一台な時代到来。映像は本当に身近になりました。
応募作品を観ていて思ったのは、作品の裾野は広がったということです。「自分でも撮れる!」という喜びや勢いに満ちた作品は観ていて色々な可能性を感じます。逆に、学校や製作会社できちんと映画を勉強されていらっしゃる方の応募も目立ちました。前者と後者の大きな違いは、前者のほとんどがキャメラを手持ちで「気分」や「雰囲気」を撮影。後者は三脚を使いキャメラを据えることで作家の「視点」や「世界」を創り出していることでした。もちろんどちらにも秀作・快作はありましたが、あえて言えば観る人のことを考えた、「観客を意識した」作品が心に印象深かったように思えます。観る人がいなければ、それは「映画」ではなく「映像」です。映画を撮ると決めたら、ぜひ「誰に観せたいか」を意識してみて下さい。

永井正夫審査員
例年より数多くの作品があり、大変嬉しいことです。
素晴らしい作品の中でも「キヲクドロボウ」はCG、アクション、撮影場所の選択等、エンターテイメントを志した、映画の醍醐味を満足させる作品になったと思います。
このコンテストに毎年挑戦している皆様には頭が下がる思いです。続けていただけたらと願っています。

古厩智之審査員
気合いの入った、長い、エンタテイメント作品が多いなあ…という印象です。お金は、スタッフは、役者は、どこでどうやってここまで集めて撮ったの!?という感じ。頭が下がります。「15分以上。制限時間なし」という募集要項どおり。愉しいから撮った。どんどん撮ったら長くなった!という「撮る喜び」に満ちた作品が多かったでしょうか。もう少しみなさん編集で切ってくれればとも思いますが…。愛する作品を切れない!という気持ちも痛い程わかります。

自主制作映画部門大林千茱萸賞「すみれ人形」について

大林千茱萸審査員
 総数62本の作品を拝見しましたが、その中で作家の「意図」「意志」「意思」を一番強く作品に感じたのが金子雅和監督の『すみれ人形』でした。本作に映し出される映像は物語に寄り添うようすべて入念に場所が選ばれていました。全編を通して光量がコントロールされているのを始め、キャメラをどの位置に据えるか、作家が画面の中で何を描きたいかがきちんと計算され、納められ、綴られていました。それは一分の隙もないほど、とても丁寧に映像を積み重ねています。これは撮影に入る前に、監督が世界観を創り出すため丹念に撮影場所などを探し求めたことの証だろうと想像できます。映画は、画面の中だけを作り込めば成立するものではありません。切り取られた画面を包み込む背景にこそ作家の「想い」や「願い」が隠されているのです。その「想い」や「願い」が画面に焼き付けられて「演出」となるのです。『すみれ人形』は決して「偶然に頼ってない」のです。金子雅和監督は29歳とのこと。素晴らしい力を秘めていると思います。その表現力をどうぞ映画で発揮して下さい。次回作を心待ちにしております。

自主制作映画部門永井正夫賞 「See you」について

永井正夫審査員
  映画はカットの繋がりというよりコマの連続で成立しているという、映画の大前提を見せて頂いた作品です。1コマの最短で、カットにつなぎでは見られない映像の世界を表現していると思います。ラストの主人公が死に至るまでと死の表現は秀逸でした。

自主制作映画部門古厩智之賞 「蛾意虫」について

古厩智之審査員
  絶対に瞬きせずに立ち尽す。首がギリギリと曲がる。少しだけ背筋を曲げて、すうっと歩く…。「この世ならざるもの」に見える人間て何て面 白いんだろう!人間、人間って言うけど土人形と何が変わらないの?と 楽しげにオバケ描写に全力投球するこの映画。映画と死は大親友なんだってことをあらためて思い出させてくれる。ハッとする。「映画が好きで堪んないから」って気持ちが、若干の情けなさとかなりの逞しさとともにびしびしと伝わる。映画の根源的悦びを求める監督、スタッフ、 役者陣の意思にノレました。面白かった!


私のふるさと部門最優秀賞 「今に伝わる『戌の満水』の思い」

吉村晴夫審査員
  テーマがはっきりした作品です。導入部から見る人の興味を惹き、歴史的背景も分かりやすく表現されています。「なるほど。なっとく」というのが見終わった後の感想です。

清水卓爾審査員
  以前から、長野県の佐久地方では、なぜ8月1日にお墓参りをするのか、不思議に思っていました。この疑問を明快に解決してくれました。作品のねらいがはっきりしており、江戸時代の大洪水の場面も、絵で表現するなど工夫がみられ、映像、コメントともに洗練された完成度の高い作品です。


■表彰式について

 表彰式と、自主制作映画部門大賞作品・私のふるさと部門最優秀賞作品の上映を、平成19年11月3日(土)にうえだ城下町映画祭の会場(上田文化会館)にて行いました。

■第五回自主制作映画コンテスト要項
■審査結果
■第11回うえだ城下町映画祭